2007年05月05日

SF:ハイペリオン2部作

ダン・シモンズ著、早川書房
 
 ハイペリオン.jpg ハイペリオンの没落.jpg

この本、読み終わるのに足かけ9年半かかりました。余程の事が無い限り文庫でしか買わないのに、余りの評判の良さに思わずハードカバーで買ってしまったのが大きな間違いでした。その間に文庫も出てしまい、果てはブックオフで百円で売られる迄に時間が経過しようとは…。
さて、では何故ハードカバーだと読めないのかと言えば…
重くて厚いので持ち歩けない→なので家でしか読めないが、貧乏暇無しなので就寝前しか読む時間が無い→読んでるとすぐ眠くなる
…と言うのが主な理由。まあ私自身にも多々問題はありますが、一番の問題は「読んでるとすぐ眠くなる」ところ(笑)。

先ずは前半の「ハイペリオン」から。
この作品は6人のハイペリオンへの巡礼者が語る独立した個人的な6つの話から成ります。各挿話にはなんら関連性は無く、各々は面白いとは思いますが、なんで今さら長々と読まされる話なんだ?とも思ってしまいました(学者の話は正直ツボなんですけどね…)。

さて後半の「ハイペリオンの没落」では語られる視点が変わり、中盤までは、何故か全ての重要な出来事を夢にみてしまう人物が見たお話として語られます。ある意味前作もこの人物が夢で見た事を語っていたとも捉えられ、没落の枠組みに前作が組み込まれ、物語はワイドスクリーンバロックの典型の様な展開となって行きます。
で、最後まで読みますと「成る程、あの6つの話はそう言う意味だったのか」と唸らせられる事には成るのですが…(詩人の話だけは何の意味があったのか良く判らんが)。
ここで私が引っ掛かったのが、結局はお話作りの為のお話でしか無い様な気がしてしまった事(何故その目的の為にはその手段でなければ成らなかったのか、と言う所が力ずくの気がする)。

もともとSFのSはサイエンスでしたが、その意味する所は演繹的であれと言う事だと思っています。私自身はSFのサブジャンルの中でも特にハードSF系が好きだったりしますが(スペオペ系も負けず劣らず好きですが)、見た事も無い世界や事象をまるで見て来た様に描写し、最終的には理詰めで思わぬ方向に結論を押しやる事で新しい認識を読者に垣間見せる事がSFの大きな柱だと思っています。しかるにハイペリオン2部作はあまりに帰納的な物語でありました。
登場するガジェットやエピソードも陳腐とは言わないにしても、SF読者ならばどこかで聞いた事がある様なものばかり(まあその辺りがマニアックな心を揺すぶるのは否定しないし、SF小説では他作品での発明品を恥ずかしげもなく使い回す事は奨励こそされ否定されるべき要素では無いのですが)。なのでこの要素に関してはマイナスでは無いが、かといって大きなアドバンテージだとも思えない。
では、壮大なスケールのストーリーはと言うと、これもなんだか自分で出した問題を自分で解いてみせて凄いだろと言ってるみたいで、最後は収まるべきものが収まるべきところに収まり、めでたしめでたしの予定調和的なものでして(個人的にはそういう話の方が好きだったりはするが)…ある意味破綻が無さ過ぎて面白くない(と言う意味で1作目だけをベスト10とかに上げている人がいるのか?)。エンターティメントとしては豪華作品(長すぎるとは思うが)ですが、はてSFとしては傑作なのだろうか?と言う疑問が沸いた訳です。

実は没落の後半1/3は、この調子で行くと読み終わるまでにまだ数年位かかる気がしたのと偶々文庫版を百円で見かけたのもあって、文庫版を買い直して読んだのですが、これはある意味正解でした。と言うのも文庫版巻末に大森望氏の解説があったのですが、この解説を読んで色々腑に落ちたからです(大森氏の思惑とは違うかもしれませんが、笑)。氏はSFアニメ「新世紀エヴァンゲリオン」を引き合いに出していますが、このアニメはアニメファンの枠を超えて大ヒットした作品です。日頃はSFアニメなんて見もしない輩まで巻き込んでのヒットでしたが、確かに魅せる外連味たっぷりのお話作りでしたが、一方で表面的には非常に分かり易いお話作りでもありました(Zガンダムの方がよっぽど難解でしょ)。そしてハイペリオンも然り。SF的小道具は満載ですが、ストーリーそのものは非常に判り安いお話です(もちろん、その背後にトンデモな蘊蓄とオタクな世界を垣間見せてますが、そこはエヴァも同じ)。
日本ではSF小説は一般には人気が無かったりしますが、そのくせハリウッド製SF映画は大人気だったりする所にも、ハイペリオンがSFファンの枠を超えて人気があったりする類似性がある様な。

と言う事で、結構面白いのに素直に楽しめない理由が判った気がしました。
エヴァブームの時にも思ったのが、日頃SFアニメなんか見てない奴らがさも知ったかで「このアニメ、オレが見た中で最高!」なんて言うんじゃねぇ…ですね。
要は、あまりに皆が諸手を挙げて褒めそやしすぎなのに少々胡散臭さを感じてしまった訳です。出来ればハイペリオンを面白いなんて声高に叫ぶ輩は、先ずはその前に100冊SFを読んでからにしていただきたいと思うわけです。「長門有希の100冊」で薦められて読んだなんて嬉しそうに語って欲しくは無いわけですね(いや私はその中の1/3も読んで無いんですが、汗)。
SFファンなんてのは昔っから偏狭なのが売りなんだから…と、SFしか読んでない私はうそぶくのであった(笑)。

さてエンディミオン以降は文庫で買ってあるので、今度はもっと早く読めるかな。
posted by FyunchClick at 14:36| Comment(4) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年02月18日

FT:チャリオンの影

ロイス・マクマスター・ビジョルド著、創元推理文庫

 03657.jpg 03658.jpg

やっと読了。正直最初はビジョルドとは言えFT(先の「スピリット・リング」の件もあり…この作品も決して悪くは無いがこちらが作者に期待しすぎだったか?)と言う事であまり期待せずに読み始めました。で、いざ読み始めたら即面白いかと言えば…主人公はマイルズに比べると全然華がないし、なんだか物語全体のトーンも陰鬱だし、いつまで経っても話は進まないし…と下巻の始め位までは感じておりました(もちろんだからと言って読むのが苦痛と言う訳では全然無いので、誤解無き様)。
しかし物語終盤はもう頁を繰る手が止められません。この主人公の真面目すぎておよそ主役には不向きなキャラクタ造形もお話上の必然なのね。
そして迎える大団円(安心して下さい、3部作とは言えこの上下巻できちんと決着は付きますから)。やはりビジョルドの物語作りの手腕は素晴らしい。

しかしあえて苦言を呈せば、やはり前半が長すぎ。
その前に読んだブランドン・サンダースン著「エラントリス 鎖された都の物語」も、最後まで読めば傑作との言葉に躊躇は無いのですが、如何せん前半が長すぎる。
それもこれもスティーブン・キングに代表されるアメリカ出版界のベストセラー=大長編信仰の御陰か(ならば何故ペリー・ローダンは米国じゃヒットしないのだ、笑)。

次巻はなんでも御姫様のお母様が主役とか。マイルズのお母様の主役のお話から察するに、ビジョルドの得意分野かと…楽しみです。
posted by FyunchClick at 12:51| Comment(2) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年01月01日

SF:心にかけられたる作品

あけましておめでとうございます。

最近とみに記憶力が減退、老人力なるものがかなりつきつつある様です。と言う事で将来の自分の為に、思い出深いSF、FT系小説を列挙しておくのも良いかもしれないと思い書いて見ることに。
まあ人間の感覚はいい加減なので、読んだ年齢や体調に左右されることは多々あるし、時が経てば心変わりもするかとは思いますが・・・。

【泣ける系:喜】
「ジャングルドクター」R・F・ヤング/ジョナサンと宇宙クジラ所収
「ジョナサンと宇宙クジラ」R・F・ヤング/ジョナサンと宇宙クジラ所収
「たんぽぽ娘」R・F・ヤング/ロマンチックSF傑作選1所収
「クロノスジョウンターの伝説」梶尾真治
「夢の10セント銀貨」J・フィニィ
「夏への扉」R・A・ハインライン
「わたしは無」E・F・ラッセル
「証人」E・F・ラッセル/パニックボタン所収
「娘」A・マキャフリ/塔の中の姫君所収
「歌う船」A・マキャフリ
「バイセンテニアルマン」A・アジモフ/聖者の行進所収
「リプレイ」K・グリムウッド
「光の帝国」恩田陸
「エロス」広瀬正

【泣ける系:悲】
「冷たい方程式」T・ゴドウィン/SFマガジンベスト1所収
「去りにし日々、今ひとたびの幻」B・ショウ
「アルジャーノンに花束を」D・キイス
「たったひとつの冴えたやりかた」J・ティプトリJr
「ドゥームズデイ・ブック」C・ウィリス
「キリンヤガ」M・レズニック
「死者の代弁者」O・S・カード

【ハードSF系】
「大渦巻U」A・C・クラーク/太陽からの風所収
「星を継ぐもの」J・P・ホーガン
「マッカンドルー航宙記」C・シェフィールド
「宇宙消失」G・イーガン
「凍月」G・ベア
「太陽の簒奪者」野尻抱介
「しあわせの理由」G・イーガン

【冒険物系】
「渇きの海」A・C・クラーク
「リングワールド」L・ニーヴン
「虎よ、虎よ!」A・ベスター
「サターン・デッドヒート」G・キャリン
「アンタレスの夜明け」M・マッコーラム
「悪鬼の種族」J・H・シュミッツ
「リオの狼男」平井和正
「ティーターン」J・ヴァーリイ
「サムライ・レンズマン」古橋秀之
「光の王」R・ゼラズニィ
「ポストマン」D・ブリン
「最果ての銀河船団」V・ヴィンジ
「サラマンダー殲滅」梶尾真治
「戦闘機チーターの追撃」D・ブラウン

【ユーモア系】
「人間の手がまだ触れない」R・シェクリイ
「スーパーマンの子孫存続に関する考察」L・ニーヴン/無常の月所収
「プラクティス・エフェクト」D・ブリン
「ふわふわの泉」野尻抱介

【レトロ系】
「宇宙船ビーグル号の冒険」A・E・ヴァン・ヴォークト
「スラン」A・E・ヴァン・ヴォークト
「幼年期の終わり」A・C・クラーク
「銀河市民」R・A・ハインライン
「ダブルスター」R・A・ハインライン
「人形つかい」R・A・ハインライン
「タウ・ゼロ」P・アンダースン
「銀河帝国の興亡」A・アジモフ
「火星のプリンセス」E・R・バローズ

【ホラー系】
「ファイアースターター」S・キング
「呪われた町」S・キング
「フィーバードリーム」G・R・R・マーティン

【カテゴライズが難しい系】
「神の目の小さな塵」L・ニーヴン&J・パーネル
「エンダーのゲーム」O・S・カード
「エンダーズシャドウ」O・S・カード
「ライトニング」D・R・クーンツ
「人間以上」T・スタージョン
「野獣の書」3部作 R・ストールマン
「月は無慈悲な夜の女王」R・A・ハインライン
「心にかけられたるもの」A・アジモフ/聖者の行進所収
「逆転世界」C・プリースト
「鞭打たれる星」F・ハーバート
「刺青の男」R・ブラッドベリ
「接続された女」J・ティプトリィJr/愛はさだめ、さだめは死所収

【シリーズもの】
「真世界アンバー」R・ゼラズニィ
「銀河の荒鷲シーフォート」D・ファインタック
「TERRAの工作員」L・マドック
「ヴォルコシガン」L・M・ビジョルド
「ワイルドカード」G・R・R・マーティン他
「オナーハリントン」D・ウェーバー
「エマノン」梶尾真治
「タフの方舟」G・R・R・マーティン
「銀河英雄伝説」田中芳樹

【ファンタシィ系】
「指輪物語」J・R・R・トールキン
「妖女サイベルの呼び声」P・A・マキリップ
「最後のユニコーン」P・S・ビーグル
「ラプソディ」3部作 E・ヘイドン
「アヌビスの門」T・パワーズ
「真実の剣」T・グッドカインド
「紅衣の公子コルム」M・ムアコック
「魔法の国ザンス」P・アンソニイ
「ベルガリアード物語」D・エディングス

あと特定の作品を挙げ難いのですが好きなのが、
 P・K・ディックの短編
 J・ヴァーリィの短編
 R・J・ソウヤーの諸作
 M・コニイの諸作

う〜ん、既に色々記憶の彼方に行ってしまって、書き漏らしてる気もしますが…。
posted by FyunchClick at 00:40| Comment(0) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月26日

SF:火星縦断

ジェフリー・A・ランディス著、ハヤカワ文庫SF

 4150115621.01._SCMZZZZZZZ_V50745668_.jpg

ここの所シリーズ物ばかり読んでいたのであまりネタが無かったのですが、久々に単発の純粋ハードSFを読みました。往年のクラークを彷彿とさせる直球勝負の逸品です。

物語自体は単純至極で、第3次火星探検隊(1次、2次の探検隊はそれぞれ思わぬ理由で帰還に至らず)が火星に無事到着するも当初予定の帰還手段を失い、1次探検隊の残した帰還船のある北極に辿り着こうとするお話。

この手のサバイバル的状況とSF的設定は良くマッチする様で、過去にも同様の幾多のハードSFがありますが(代表格はクラークの「渇きの海」でしょうか)SF的情景描写と人知にわくわくしてしまいます(現実であれば不謹慎極まりないですね、笑)。

文章の構成も短い章を積み重ねていく手法で(この辺りもクラークっぽい?)まとまった読書時間の取れない私にも読みやすく(笑)、また人物造形の書き込みも、読者を納得させる必要最低限に思われ好感が持てます。

と言うことで、巷ではよく「SF作家、見て来た様な嘘を書き」等といわれますが(古い?)事実を見て来たかの様に書くのがどれほど凄いことか思い知らされます。
posted by FyunchClick at 23:32| Comment(0) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年08月19日

SF:メモリー

ロイス・マクマスター・ビジョルド著、創元SF文庫

4488698123.01._SCMZZZZZZZ_V62859292_.jpg 4488698131.01._SCMZZZZZZZ_V62859332_.jpg

マイルズ・ヴォルコシガンシリーズの最新刊です。最初の「戦士志願」が日本で刊行されてから約15年が経ち、小説内でも主人公も30歳ですか…感慨深いですねぇ〜。特に今回は過去作品への言及も多々あり、なんだか総集編みたいで尚更です。
内容に関しては、もう只々おもしろい(マイルズ物を読み続けて来た人限定なのかもしれませんが)と言うだけにとどめておきましょう。と言うのも今回は後半がミステリ仕立で、何を書いてもネタバレになってしまいそうなので…。
さて既にマイルズファンの方々に今更アピールしても釈迦に説法なので、未読の方々を前提にちょっとシリーズの解説をしてみます。

先ずはマイルズが主役の作品を作中年代順にご紹介。

「戦士志願」
人類はワームホールを利用して幾多の惑星に植民し、各惑星は主権国家として独立している時代。主人公マイルズが生まれた星:バラヤーは、最近までワームホール航路網から一時的に分断され、科学技術的には多少遅れた軍人貴族政治の星です。
有力貴族の息子であるマイルズですが、受胎中の母親が化学兵器テロに合った影響で、小さな体と折れやすい骨格と言うハンディを背負って生まれてきます。御陰で望んでいた士官学校の入試に失敗し、失意の旅に出た先で思わぬ冒険に遭遇します…と言うのがあらまし。コンゲーム的面白さがあり、なんとか肉体的ハンディを知力でカバーしようと奮闘するマイルズに読者の思いは傾かずにはいられません。また皮肉なユーモアも本シリーズのポイント。

「ヴォル・ゲーム」
「戦士志願」で語られた顛末で入学が叶った士官学校を卒業後のお話。本シリーズの中核を成すデンダリィ傭兵部隊とネイスミス提督(=マイルズ)の復活が語られます(種は「戦士志願」で蒔かれます)。

「無限の境界」
これは短編集ですが、所収の「喪の山」はシリーズ中でも重要な挿話になります。他の2作も傑作であり、かつ他の長編とも密接に絡む事になります。

「天空の遺産」
ここまでも名前のみは頻繁に登場のセタガンダ星について語られます。

「親愛なるクローン」
悪意を持って作られたマイルズのクローンが登場。ただでさえ2重生活でややこしいマイルズなのにクローンまで現れて更にややこしい事に。

「ミラー・ダンス」
前作で登場のマイルズのクローン=マークの活躍(?)が語られます。そしてマイルズは悲惨な目に遭遇。

「メモリー」
前作で被った悲惨が更なる悲惨を生み…意外な展開になりますが、非常にマイルズ物らしいお話でもあります。そしてやっとマイルズは長年のジレンマから抜け出します。


このシリーズはマイルズ以外の登場人物も非常に魅力的であり、それら方々が主役の作品もあります。

「自由軌道」
同じ時系列上と言うだけで内容的には殆ど(?)無関係ですが、泣かせるお話です。

「名誉のかけら」「バラヤー内乱」
マイルズのお母様のコーデリア・ネイスミスの若き(?)頃の恋と冒険のお話。やはりこの方はただ者じゃ無かった事が語られます。マイルズ誕生秘話でもあります。おばさんが主役だからと引かないで下さいね、お勧めです。

「遺伝子の使命」
こちらはシリーズ外伝的雰囲気ですが、ネイスミス提督の美貌の副官エリ・クイン(個人的にはZガンダムのエマ・シーンをイメージしてます、汗)の活躍が語られます。

最新作の「メモリー」でとりあえず「おしまい」と言う雰囲気もしますが、実は続編が少なくとも3作は本国では出版されており、まだまだお楽しみは終わりません。
posted by FyunchClick at 23:08| Comment(2) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月26日

SF:コラプシウム

ウィル・マッカーシー著、早川SF文庫

collapsium.jpg

前翻訳作は私にはあまり楽しめなかったのですが、今作はかなり楽しめました(L・ニーヴン的な面白さがあります)。
お話の核になるのは、コラプシウムと呼ばれるブラックホールから作られた人工粒子により実現される超テクノロジーの開陳(まるでミノフスキー粒子の様に便利な代物の様です、笑)。そしてウェルストーンと呼ばれる瞬時に物性を変化させる事が可能な物質も登場します。これらにより過去の数多のSF(小説、映画)で無責任に語られて来た様々なガジェットをハードSF的に実現しています。曰く、転送機、レプリケータ、超光速通信、不老不死、無慣性航法、フォロデッキ、テラフォーミング、ライブラリコンピュータ・・・(まあどの程度整合性があるのかは私の知識じゃ皆目検討がつきませんが)。
さらに後半は本格的にスペースオペラしちゃいます(それもパルプ雑誌系の乗り)。捻りは主人公が所謂ヒーローじゃ無くて隠棲したマッドサイエンティストと言う所でしょうか(何となくバックトゥザフューチャのドクをイメージしちゃいました(不老が実現してるので見た目は恐らく壮年でしょうが))。
と言う事で確かにハードSF+スペースオペラの帯には偽りなしです。ただ何かと話題の表紙絵に関して言えば、この人物はヒロインである女王様では無くて途中で出てくる脇役の方なので、余り過度な期待はしない様に(出版社の確信犯的作為が感じられます、笑)。
でも表紙に関してはあちこちで取上げられている様なので企画側はほくそえんでいるんでしょうねぇ(それで続刊が順調に出版されれば良しですか・・・)。
posted by FyunchClick at 18:58| Comment(0) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年04月12日

小説:亡国のイージス

福井晴敏著、講談社文庫

亡国のイージス.jpg

文庫版は、かなり分厚い上下巻ですが「小説は良いなぁ」と思わせてくれる作品です(他のメディアじゃ、こうも巧く語れない内容でしょう)。
福井晴敏氏はこれが初読になりますが、こんなに書ける方とは思いもよりませんでした(何せTVのガンダム関連のトーク番組で見ただけの印象だったので失礼しました)。まるで体験してきたかの様な自衛隊生活描写や艦内描写に舌を巻き、何故に推理作家協会賞受賞作?も納得しましたし、人間描写も厚みを感じさせ最後の方では何度も目頭が熱くなりました(単に歳の所為?)。お話作りのバランスも良し、「まだこんなに頁が残ってるのに大丈夫か?」と途中で心配しましたが杞憂でした。
もし自分が映画監督だったら、こんな作品の映画化なんて絶対やりたく無いよなぁ(プロだとそうもいかないでしょうが・・・)。幾つもの何かを削らないと絶対に2時間枠に入る訳がありませんから。と言う事で映画は未観賞。
posted by FyunchClick at 00:48| Comment(0) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月24日

SF:夏のロケット

川端裕人著、文春文庫

夏のロケット.jpg

なにげなく見かけたタイトルに引かれて購入しましたが、素晴しい作品でした。ああ今までこの作品の存在を知らなかったのが口惜しい。でもサントリーミステリー大賞優秀作品賞受賞作なので巷では有名なんでしょうね。
内容は、ロケット好きだった高校時代の友人達が大人になってから集まって自分達でロケットを打ち上げ様とするお話なのですが、感心するのは先ずロケットの技術的な側面に関するディテール描写。私自身はそれ程詳しい訳ではないのですが、中々圧倒されるリアリティです(どうやら著者は自然科学系のノンフィクション物を幾つも物にされているらしいのでリサーチと租借はお手の物なのでしょう)。さらにロケットや宇宙、他惑星に対する憧憬やノスタルジー(古典名作SFへの言及)を絡めてのお話作りはもう堪りません。「青春小説」なんて言う紹介も見かけますが、いえいえこれは「中年小説」ですよ、ただし「心は少年」ですね(ですからおじさんに成ってから読んでこそ堪能出来ます、笑)。
現在のSFシーンではロケットはノスタルジーのフィルターを掛けて語られる事も多いのですが、現実では未だに打ち上げ失敗も多々報じられる不安定な技術なのが寂しい所です。

最後にちょっと脱線して名作ロケットSFでも御紹介しておきましょう。
「月を売った男」「鎮魂歌」R・A・ハインライン
  正にっ!と言う古典。
「天の光はすべて星」F・ブラウン
  これも同上。
「ロケットガールシリーズ」野尻抱介
  現代的センスの良作。
「星のパイロットシリーズ」笹本祐一
  同上。
「楽園の泉」A・C・クラーク
  作るのはロケットじゃないんですが心は同じと言う事で。
「天使墜落」L・ニーヴン&J・パーネル&M・フリン
  ちょっと違うか?(笑)
「赤い惑星への航海」T・ビッスン
  これもちょっと主旨違いかもですが、個人的に好きなので。
「火星年代記」R・ブラッドベリ
  ポエティックな作品で、ロケットは象徴的な意味合いの気は
  しますが、外せないですね。たぶん「夏のロケット」と言う
  タイトルは本作中の「ロケット・サマー」へのオマージュ。
posted by FyunchClick at 00:45| Comment(1) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2006年02月17日

FT:魔術師ベルガラス、女魔術師ポルガラ

デイヴィッド&リー・エディングス著、ハヤカワ文庫FT
魔術師ベルガラス:
 銀狼の花嫁、魔術師の娘、王座の血脈

ベルガラス.jpg

女魔術師ポルガラ:
 運命の姉妹、貴婦人の薔薇、純白の梟

ポルガラ.jpg

ベルガリアード物語」、「マロリオン物語」を読んだのはもう十年以上も昔の事になりますが、私が今までに読んだエピックファンタジーの中ではトップレベルの面白さだと記憶しています。指輪物語は世界に対する描き込みで読ませる作品ですが、こちらはキャラクタ造形で読ませる比重が高いですね。
続編の2冊が書かれた事は風の便りに聞いていましたが、今頃になって翻訳出版されるとは、まさに最近のファンタジーブーム様々です。
まあ正直この2冊は、前述の正編2作の読者サービス的位置づけなので、単独作品としては全くお勧め出来ません。特に「ベルガラス」は「ベルガリアード物語」に至るまでの歴史的経緯を俯瞰視点から語ったものなので、なんだか解説付き歴史教科書を読んでるみたいでした。
一方「ポルガラ」の方はその時々における当事者の視点で物語られているので、こちらは歴史小説みたいでかなり楽しめました。特に最後の父、娘のシーンはこみ上げて来る物がありました。
という事で、ファンタジーに興味の有る方も無い方も、先ずは「ベルガリアード物語」を読んでみましょう。楽しめたなら続けて「マロリオン物語」(実は私、こちらは殆どお話を忘れてますので読み返したい)。その先にはおまけのこの2冊が待っていますよ。

追伸:
この2つのシリーズはやたらに登場する国と人が多くて、特に読んでから何年も経つ今となっては、もう誰が何処の何某かが判らない状態です。誰か人物関係や家系図をまとめようと言う奇特な人はいないかしら。
WikiPedia:ベルガリアード物語
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%AC%E3%83%AA%E3%82%A2%E3%83%BC%E3%83%89%E7%89%A9%E8%AA%9E
posted by FyunchClick at 00:07| Comment(1) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月20日

SF:AΩ(アルファオメガ)超空想科学怪奇譚

小林泰三著、角川ホラー文庫

AΩ.jpg

ここ何年も日本SFから遠ざかっていたのですが、ハードSF御三家との噂を頼りに最近読んで見たのが
・野尻抱介:太陽の簒奪者
・林譲二:ウロボロスの波動
・小林泰三:海を見る人

でした(文庫化されたタイミングもありますが)。3作品共に良書でしたが、とりあえず今回はこれら本を探している過程でたまたま見つけた作品の紹介です。

さて何故本書が気になったかと言えば、
・主人公の名前はモロボシハヤト(諸星隼人)
・主人公は宇宙人との遭遇事故で一旦死亡するも蘇る
・蘇った主人公は巨大な超人に変身して敵と戦う

と言う設定にあります(もうピンと来ましたよね)。
とは言えこれだけじゃ、マニア向け悪乗り馬鹿話の可能性もありますが、結論から言えば真摯(ちょっとニュアンス違うかな?)なアプローチの良作です(多少のマニア向けジョークもありますが)。そしてやはり読ませ処はハードSF的解釈によるリアルなウルトラマンの有り様=「○×△の謎」本的な面白さでしょうか。

まあ正直、私はホラーがあまり好きじゃないので、導入部のスプラッタ度にはちょっと閉口しましたが、それも読み進む内に慣れました(と言うより感覚が麻痺しました)。そう言う意味では下手に感情移入する様なストーリー展開やキャラ描写じゃ無いのも私的にはプラスでした(逆にホラー好きには不満かな)。
と言う事で本作は、ホラーの皮を被っていますが、ハードSFとして十分楽しめます。
posted by FyunchClick at 20:08| Comment(4) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年12月04日

小説:死のサハラを脱出せよ

クライブ・カッスラー著、新潮文庫

死のサハラ.jpg

映画「サハラ−死の砂漠を脱出せよ−」の原作でもあるダーク・ピットシリーズ11作目。
基本的に紹介するのはSF、FTに限定しようと思っているのだが(と言う事にしておかないと、如何に読書範囲が偏っているかがバレバレになるので(笑))、この作品は予想以上に面白かったのでご紹介。
このシリーズは過去2作ほど読んでおり(「タイタニックを引き上げろ」は映画もみましたが)良作シリーズである事は定評なので、映画化記念に久々にピット物を読んでみるかと手に取りました。ところがなんと、過去読んだ物の数倍は面白いじゃないですか。しかしコレだけの話を2時間の映画にするのは難しそうだな。まあ機会があれば見てみましょう。とにかくこの原作は良く出来てます。
posted by FyunchClick at 09:53| Comment(0) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月11日

SF:マッカンドルー航宙記・太陽レンズの彼方へ

チャールズ・シェフィールド著、創元SF文庫

マッカンドルー2.jpg

俗人離れした科学者と俗人女性船長コンビのハードSF風冒険を描いた連作短編集です。この手の作風も最近では珍しい部類じゃないでしょうか。深刻でも無く、かと言って冗談が過ぎる事も無い品の良さが好きです。
同時に前作「マッカンドルー航宙記」も復刊されていますので、お買い逃しの方はあわてて購入して下さいね。
そう言えば「マイ・ブラザーズ・キーパー」だけ買い逃してるんだよなぁ。
posted by FyunchClick at 10:23| Comment(0) | TrackBack(1) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

SF:まろうどエマノン

梶尾真治著、徳間デュアル文庫

まろうど.jpg

少年の日のひと夏の切ない体験話、良いですね。時代背景が自分の世代と重なる事もあり、かなりセンチメンタルになりました(よく夏休みには母方の実家の田舎に長期で遊びに行ったものです、しかも乗り物が蒸気機関車だったぞ)。
さらに今回は、お得意のタイムスリップネタも交えてのお話で、かなり満足。あっと言う間に読めてしまうのが勿体無い位。

そう言えば「ぼくの夏休み2」なんてゲーム持ってたな、ちょっと初めてみようかしら。でも綺麗なお姉さんは出て来ないんだろうなぁ。
posted by FyunchClick at 09:13| Comment(0) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月07日

SF:ハイブリッド−新種−

ロバート・J・ソウヤー著、早川SF文庫

ハイブリッド.jpg

ホミニッド、ヒューマンに続くネアンデルタール・パララックスシリーズの3作目にして最終巻です。期待に違わず面白い。特に最終巻と言う事もありサービスてんこ盛りです。
最初はタイトルから「デモンシード」(D・R・クーンツが原作なのね)見たいな話もちょっと想像してたりして(笑)。もちろん全然違いましたけどね。
個人的には宗教ネタが痛快。しかし日本ならまだしも、欧米文化の中でここまで書いちゃって大丈夫なのでしょうか、ソウヤー先生(カナダ文化はまた違うのか?)。過激な宗教団体から狙われやしないかと心配になってしまいます。
posted by FyunchClick at 13:19| Comment(0) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年11月01日

SF:ディアスポラ

巷でも言われている事ですが、SF読んでて良かったと思わせてくれる作家の現在代表がグレッグ・イーガンでしょう。で日本での紹介順が4番目の長編が本書「ディアスポラ」(実際に書かれたのは8年位前)。タイトルは集団離散といった意味らしい。

ディアスポラ.jpg

これまで紹介された作品は量子力学ネタがメイン(はっきりとは自身が無かったりする(笑))でしたが、今回はずばり宇宙と進化です。人類は何処へ行くのかといったSFでは古典的なテーマを扱っています。近代素粒子理論を多少なりとも知らないと単語の洪水に翻弄されますが、お話自体は長編作品中でもっとも判りやすいと思います(とか言いながら、出てくる異生命体をなぜトランスミュータと呼ぶのか読み落として、人に教えてもらったのですが(笑))。
まあSFファンはほっといても読むんでしょうね、この本は。

個人的にはイーガンは短編が凄いと思ってます。中でも「しあわせの理由」は衝撃的。
posted by FyunchClick at 00:27| Comment(0) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月14日

SF:機動戦士Zガンダム劇場版の次回サブタイトル予想

劇場版Zの副題は、

・星を継ぐ者(もの) → ジェームズ・P・ホーガン
・恋人たち → フィリップ・ホセ・ファーマー

とSF小説のタイトルで攻めて来ているので、3本目が何になるのか気になってます。
私の予想ですと、ズバリ
 「発狂した宇宙」
もしくは
 「さあ、気ちがいになりなさい」
じゃないかと・・・(ありゃ、どっちもF・ブラウンだ)。
posted by FyunchClick at 23:26| Comment(2) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月16日

SF:栄光への飛翔

エリザベス・ムーン著、早川SF文庫
特に不可無く読めます。日本のこの手のものは奇をてらいすぎたり、やたら狙いすぎたキャラクタだったりで鼻持ちならないものが市場に氾濫していると思いますが、そう言った意味では新鮮です(いや本当、以外とオーソドックスな作品って少ない←矛盾してますねこの言い回し)。

4150115281.09.MZZZZZZZ.jpg

とりあえず続巻が読みたい作品です。
しかし、新しいシリーズを始めるのは良いけど、ちゃんと責任もってフォローしてよね→ハヤカワ(スコーリア戦記は? オナー・ハリントンは?)。


続きを読む
posted by FyunchClick at 12:20| Comment(1) | TrackBack(1) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月08日

SF:楽園の泉

アーサー・C・クラーク著、早川SF文庫
年に一冊はこういう作品を読みたいものです。

楽園の泉.jpg

これSFマガジンの連載としては持っているんですが、それじゃ通勤電車の中で読めないので文庫が欲しくて、でもちっともハヤカワは再販してくれませんでした。で、ず〜っと探していたんですが、やっとブックオフで発見しようやく読みました。

本書は地球軌道エレベーターの建設にまつわるお話で、ご存命のSF作家で唯一人の最重鎮の最後の傑作でしょう。
クラークは決して巧い小説家では無いと思いますが、そのストイックで自然科学に誠実な作風は非常に好感が持て、じわじわと感動が押し寄せる作品も多々あります。
個人的には氏の近未来物のファンなので、その私的トップ3長編をあげるならば
 楽園の泉、渇きの海、海底牧場(順不同)
となります。
「宇宙のランデブー」は一般的には評価が高いのですが、私は少し苦手(さらにその続編(他者と共作)ではクラーク的好さが微塵も無いのが残念)。

あと短編もすばらしいです。「これぞSFという短編を1つ」と言われたら、私はメールシュトローム2を挙げます(今なら『20世紀SF3』で読めます)。
posted by FyunchClick at 02:00| Comment(0) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月05日

SF:タイム・リープ―あしたはきのう(上/下)

高畑京一郎著、電撃文庫。
とってもさくさく読めます。
精神だけが時間移動するパターンのお話ですが、理詰めの構成に好感が持てる佳作です。
ただタイムトラベルものは全体的にレベルが高いので、それらと比べてしまうとちょっと物足らない気もします。

タイムリープ.gif

あと最後のリープだけは何が原因なのだ?
posted by FyunchClick at 20:10| Comment(0) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年09月02日

SF:ヒューマン-人類-

「ホミニッド-原人-」に続く、ネアンデルタール人平行世界との交流のお話。今回は全体がエピソードと最終巻への伏線と言った感じでした(それでも十分に面白い)。ネアンデルタール世界は、こんな科学技術があれば理想郷は可能だという思考実験の産物ですね。次巻に期待。

ヒューマン.jpg

ロバート・J・ソウヤー著、早川SF文庫
posted by FyunchClick at 19:07| Comment(0) | TrackBack(0) | SF、FT | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする